大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(け)6号 決定

本件異議申立理由の要領は、申立人は一家四人暮しで申立人一人の働きで生計が一ぱいで日雇労務のため月収六千円程度で、訴訟費用の負担を命ぜられても完納できないというのである。

記録に徴すれば、申立人は昭和三十一年一月二十七日甲府地方裁判所に於て暴力行為等処罰に関する法律違反罪として懲役八月二年間執行猶予となり、控訴して昭和三十二年三月十三日控訴棄却の判決を受けたが、右第一、二審の判決にそれぞれ訴訟費用の負担を命じた部分が存することが認められる。ところで本件異議申立人の職業、収入、生活状況等をみると、経済的に恵まれた環境とはいい難いことは記録上認められないではないが、さればといつて貧困で訴訟費用の負担を命ぜられても、これを完納することができないものとまでは認められない。現に申立人は右事件の第一、二審ともに私選弁護人を数名依頼しているのであつて、即ち第一審の甲府地方裁判所に於ては、昭和二十七年七月一日附をもつて弁護士Aを弁護人に選任する旨届出があり、同年十月七日更に弁護士Bを弁護人に選任したが同弁護人が昭和二十八年二月二十日辞任した後同年六月八日附で弁護士Cを弁護人に選任し、同弁護人は第一審判決言渡まで弁護人であつたから、同年八月二十日前記A弁護人が辞任するまではC弁護人を主任弁護人とし、C、A両弁護人がその訴訟手続に関与していたことが認められるのみならず、第二審においては他の相被告人六名と共に弁護士D、同E両名を弁護人に選任しているのである。このように弁護人の数に於て多少変動はあつても第一審で二名の弁護人を選任し、第二審においても終始二名の弁護人を選任していたことを考えると、異議申立人が訴訟費用を完納することができないほど貧困であるとはいえないからである。もつとも申立人が提出した山梨県南巨摩郡増穂町長秋山湛秀名義の証明書によると、申立人の資力としては訴訟費用を完納できないことを証明する旨の記載は存するけれど、同町長はある程度資力を有し訴訟費用の負担に堪え得ると認められる相被告人の場合にも本件証明書と同じく訴訟費用を完納できない旨の証明書を作成していることに徴し、そのような証明をするに当つて実質的にそれが正当であるか否か調査したかどうか疑わしく申立人が申請するまま機械的に右の如き証明書を濫発したと認められ、町長の証明書のみで、申立人が貧困で訴訟費用が完納できないと認むべき程度の信用性があるとはいえない。その他所論事実の真実であることを認めるに足る資料がないから、申立人の訴訟費用免除申立を却下した原決定は相当で論旨は理由がない。

(加納 吉田作 山岸)

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